『二十面相の娘』(富沢信雄監督、2008年8月現在放送中)※少しネタばれあり
★視点・補助線
・戦争を描くアニメに生じている情報の真空
■「戦争・国家・アニメ」というテーマで最初に取り上げたいアニメは、現在放送中の『二十面相の娘』である。まだ終了していない作品であるので、ストーリー面での総括などはできないが、「二十面相」が関わった日本軍の兵器開発が大きな意味をもっていることは確かだ。ちなみに「日本軍」という点は巧妙に表現が回避されている。
■本作では、戦争の苦難や被災などの描写もちらほら出現する。しかし、そこで決定的に抜けているのは、「誰と戦争をしていたか?」「誰が誰を戦争に向かわせたか?」「誰がどこで戦争をしたか?」などの基礎情報である。これを混ぜ込んでしまうと戦争のリアルさが前景に出てうるさくなり、ストーリー面に支障をきたしたりする。また製作サイドにも視聴者を「ウンザリ」させてしまうという判断が意識的か無意識的かに作用しているといってよいだろう。いわば、タブー化作用と言えるだろうか。
■アニメをはじめフィクションからニュース・ドキュメントに至るまですべて選択的に仮想空間を構築していく。『二十面相の娘』はナイーブにも戦争を扱うことで、ストーリーバランスを崩さないように気を付けている点で、従来のアニメのパターンを踏襲している。しかし、見ようによっては時代が流れ、現在2008年になり、現実に戦争体験者が減少する中で、「戦争の歴史」を扱うことの難しさと、証言者の減少と反比例してナイーブさも増すという事実の現れがここにあるのかもしれない。
■ほかにも戦争話の比重が大きくなると、「少女探偵団」の明るい活躍なども面白く描かれるのも心理的なバランサーが働いているのではないだろうか。
■補足だが、『ゴーストハント』(2006-2007年)の18話から21話まででも戦時中の「人体実験」の話があったが、『二十面相の娘』同様に、誰が犠牲者だったかは語られていない。「人体実験」された人たちは、「価値の低い、もしくはない」生命とみられた人々のわけだから、少し想像すれば犠牲者像のいくつかのパターンは思い浮かぶだろう。『二十面相の娘』では、空根探偵の戦災描写などの「犠牲」は描かれているということと対照的である。

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- 2008/08/13(水) 12:05:21|
- 戦争・国家・アニメ
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『ソウルイーター』(五十嵐卓哉監督、2008年8月現在、18話まで放送中)
★視点・補助線
・ソウルイーターの空間描写の特性とは何か?
・魂に届くメッセージはいかに放たれているか?
■ボンズの送る2008年の長編力作が『ソウルイーター』だ。各回の最初に述べられるように「健全な魂は健全な肉体と健全な精神に宿る」というのが大きなテーマである。
■作中ではまさに観る側の「魂」に語りかけるようにストレートにメッセージが放たれていく。特に強い心とは何か?弱い心とは何か?が象徴化されて繰り返される。だからといって、単調でもまた重い感じでもない。ポップな画面や会話のやり取りが行われるということも、それに寄与しているが、とりわけ画面の流れ方が視聴者を惹きつけるし、同時にメリハリがあって集中して鑑賞できる作品である。
■まだ18話であり、おそよ残り三分の二ほどがあるのでストーリー面では、大化けするか停滞するかまたは下降線をたどるかは不明であるが、画面のメリハリだけに頼る構成を超えてストーリー面での深みが増せば本当にすばらしい作品になるだろう。とにかく、2008年度のいずれかのアニメ賞に名を連ねる可能性はある。もちろん、賞が全てではないし、賞を獲る作品が必ずしも素晴らしいというわけではないのだが。 
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- 2008/08/09(土) 00:06:06|
- ソウルイーター
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『マリア様がみてる』(ユキヒロマツシタ監督、2004年)
★視点・補助線
・『マリみて』におけるコミュニティの閉鎖性の効果
・マリア様とは何か?
■『マリみて』と呼ばれる作品。原作は少女小説。これも根強い人気を得ている。設定を簡単に説明するとお嬢様私立高校の先輩後輩物語なのだが、彼女たちの先輩後輩関係(お姉さまと妹(スール:仏語))の「カップル」を細やかに描くことで、お嬢様として各キャラがうまくキャラ立ちしている。この物語の「感染力」は凄まじい。これは、こだわりをもって何重にも張り巡らされた「閉鎖性」が原因であると思われる。以下にその要素を列挙する。
・私立女子高の規律と閉鎖性(マリア様はその規律・見えない監視者の象徴だ)
・他者を幾分寄せ付けない感じの先輩後輩(恋慕、そして言わなくても分かりあう仲)
・生徒会本部という限られた空間
・富裕層という限定的な社会階層を描く
・お嬢様女子高生の心理描写という限定性
以上にこだわって描くことで、その「コミュニティの温かさ」が一種の究極的な形で表現されている。
■最近話題にしてきた「思い出共同体」が象徴的に示されている点も補足したい。それは結局は「思い出共同体」とは辿りつけない理想形であるということから、『マリみて』の場合、それを極端な形で、ある意味わかりやすく、「辿りつけない共同体」の現実とその魅力を示している。 
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- 2008/08/08(金) 11:03:45|
- マリア様がみてる
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『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(谷口悟朗監督、2008年7月現在放送中)
★視点・補助線
・スザクが「ウザクとなる」理由。
・『コードギアス』のテーマは一体何であったのか?
(一部ネタばれあり)
■物語も後半に入り、キャラクター数もすでに多く、さらにその数を増す『コードギアス R2』。そこではキャラ描写も短時間の連続というスタイルになってきた。すでにこの時点で、われわれは『コードギアス R2』という「思い出共同体」の中で心地よい時間を過ごす「欲望する機械」と化しているといえるのかもしれない。「思い出共同体」に関しては、また別の記事内で書きたいと考えるが、ストーリーにせよ、キャラにせよ、短いコマの刺激の連続であり、いわばアメリカのニュース番組が数十年前に導入した手法、「ザッピング」を意識した短いニュースをテンポよく連続させるというものに同等する。
■今回は、キャラの中でダントツに人気がなく、第16話では「ひどくなじられた」スザクに注目したい。アニメ中でもこのキャラを「ウザい」と突き放したことには面白さがあるが、視聴者の反応の中でもスザクはウザく感じる人が多い。
■しかし、この欲望を満足させるためにどんどんと突き進む落ち着かない展開から一歩身を引いて考えてみた場合、スザクは最も有りうる精神構造を有しており、その中での葛藤しながらの矛盾した考えや行動は、むしろ「共感」を得てもよかったとも考えられる。しかし、そういった「リアル」は、刺激を重視して視聴者を飽きさせない本作の中では、スザクのことを「落ち着いて」考えるなんて不可能に近くなっているのだ。これは本作が、(穿ってみた場合に)客を釣るためだったとしても「戦争」をテーマとしている点もスザクと同じ立場に置かれている。「戦争」は第16話で「単純」になった点からもわかる。
そして、「シャーリーの死」の意味もかなり希薄化している。

テーマ:コードギアス 反逆のルルーシュ - ジャンル:アニメ・コミック
- 2008/07/29(火) 01:23:33|
- コードギアス
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